染色知識 其の三 〜道具編〜

「染めの道具」について

今回は染めの道具についてお話しします。

ウール糸を染める方法はたくさんあります。
浸し染めやハンドペインティング、絞り染め。
そのなかで、わたしが使用している技法は浸し染めと呼ばれるもの。糸や羊毛を染めるのにもっともポピュラーな方法です。これに必要な道具のお話をします。
(ここでは化学染料を使用した染めについての話に限定します)

まず用意したいのは鍋、素材、染料。

鍋は大きなものがいい。
たとえば100gの糸を染めるのには3リットルの水が必要です。
ということは、4〜5リットル容量の鍋が必要ということ。
一度に着分染めたいというときはもっと大きな鍋が必要になってきます。
休日にホームセンターに出かける用事があれば、大きな鍋を探してみるのもいい。けれど自転車で出かけたときの衝動買いには注意。かごに収まりきらずに配送、または後で車で取りにくるはめになりますからね!

それから素材。
もちろんこれがなければ始まらない。
染める素材は何だっていいんです。
木綿のハンカチ、シルクのスカーフ、コットンウール混の糸、羊毛、などなど。靴だって鞄だって、染めようと思えば染められるんです。
唯一染めるのが難しいのは、恋人の心くらいでしょうか。

そして染料。
これは、素材によって選びます。
さきほど取り上げた素材のなかでも、たとえばウール100%の糸は酸性染料というものを使用しますが、これではコットンや麻は染まりません。
なぜなら酸性染料というものは動物性素材を染めるための染料だからです。
植物性素材であるコットンや麻などは反応染料というものを使用します。

上記の3点は絶対必要なものたち。いわば三種の神器です。
それ以外にも、いくつか必要なものがあります。

粉末の染料をお湯で溶かすためのちいさなボール。
わたしは琺瑯製のボールを愛用しています。
熱に強いし、さっと洗うだけできれいになるからです。

染料を計る計量スプーン。
5ml容量のもの、つまりは料理でいうところの「小さじ」が重宝します。
ところで外国の染色について書かれた本を読んでいると、「ティースプーン1杯分」という表現をよく目にします。これは日本でいうところの「小さじ1杯」という意味らしいのですが、わたしたちは小さじ1といわれると、きっちりすり切り1杯を計りたくなる。ところがティースプーン1杯というのはティースプーンに山盛り1杯分という、その人のさじ加減で量が変わってきてしまいそうな、何とも曖昧な表現だったりします。外国の人というのは、きのうと料理の味が少しくらい違っても怒ったりしない、おおらかな人が多いのでしょうか。

水温を計るための温度計。
大きなスーパーの調理用品売り場で売っている料理用の温度計で十分事足ります。
表示はデジタルがやっぱり便利。
染色の際の水温管理は何よりたいせつなことなので、温度計はあった方がいいと思います。
もし温度計がない場合も大丈夫。必要な温度の目安はちゃんとあります。
まず素材(ウール糸)を鍋に投入するときの温度である30℃は手をつけて少し温かいと感じる温度(人肌よりも少し低めの温度ですね)。それから水温をどんどんあげていき、80〜90℃で温度を保つのですが、それは鍋の縁に湯気がもうもうとたちこめてきたら、ちょうどいい。ふつふつと泡が立ち始めると沸騰直前、90℃を超えてきているので注意が必要です。

最後に意外と重要なpH試験紙。
pH(ピーエイチ、ペーハー)というのは、水溶液の性質のこと。中性が6〜7くらいで、それより値が小さくなれば酸性、大きくなればアルカリ性です。
ウール素材に染料がしみ込むのに適した値はpH4くらい。だけどこればっかりはなめて調べるわけにはいきませんので、試験紙を使用してpH値を計るのです。
もしpH試験紙がなくても、たとえば15リットルくらいの水に対してだとティースプーンに半分〜1杯くらいのクエン酸を入れれば、すべての染料が素材に吸収されるでしょう。そしてその時のpH値はおそらく4くらいになっているはずです。

その他、糸を繰るための染色棒、クエン酸、タオルなども必要になってきますが、主なものは上記に上げたものたちです。

これらの道具を使って、日々染めに勤しんでいるわたしなのでした。

さあ次回は最終回。

浸し染めの方法をご紹介させていただきます。

「染色とは」はこちら

「染色知識 其の一 〜色彩編①〜」はこちら

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